ハワイでのエナジージェルとの出会い
滝川 次郎 Jiro Takikawa
有限会社パワースポーツ代表取締役。2000年に同社を創設し、スポーツ栄養食品やスポーツ用品ブランドの輸入、開発や販売を手掛ける。あわせてスポーツイベントの企画・運営も行い、トレイルランニングでは2007年の「OSJハコネ50K」や2008年から今日まで続く「OSJトレイルランニングレースシリーズ」のディレクターとして知られる。今年9月に60歳となってからもアスリートとしてスパルタンレース新潟でエイジカテゴリー優勝、アイアンマンマレーシアのハーフ完走とその勢いは止まるところを知らない。
DogsorCaravan 岩佐 : 滝川さんはスポーツに特化した栄養食品を日本で展開してきたパイオニアであると同時に、トライアスロンやトレイルランニングのアスリートとしても活躍されています。スポーツニュートリションに携わることになったきっかけを聞かせてください。
滝川さん : 前職でハワイのトライアスロン大会を立ち上げる仕事をしました。アメリカのエナジージェルのブランドが大会に協賛してくれたので、自分でもそれを食べて自転車で走ってみました。その時「これ、いいんじゃね?」と思ったんです。それがのちに輸入代理店として起業することになったパワーバーとの出会いです。
味も気に入ったし腹持ちもいい。それまで日本では栄養補給のための商品はあるけれど、スポーツをしながら補給することは想定されていなかったから、チョコレートバーを食べるくらいしか選択肢がなかったんです。これは売れると思いました。
DC : 滝川さん自身がトライアスロンやマラソンをしていたからこその出会いですね。
滝川さん : いえ、実はそのころはまだスポーツといってもエアロビクスやダイビング、テニスで遊んでいた程度です。パワーバーに出会ったのが、僕のトライアスロンやトレイルランニングを始めたきっかけなんです。
DC : それは意外です。「パワースポーツ」を起業されてからは順調でしたか。
滝川さん : 順調なんてとんでもない。そのころ国内の大手メーカーがスポーツ向けのゼリー飲料を発売して人気を集めました。エナジージェルは甘ったるくて食感も悪いという人が多かったし、こちらは大手のように宣伝にお金をかけられない。輸入した製品がどんどん賞味期限切れになって、日々どうしようかと焦っていました。
転機は二つありました。一つはそのころ人気を集めはじめたトレイルランニングです。ロードマラソンの大きな会場だけでは商品を知ってもらえないと考えて、トレイルランニングの大会に出店しました。プロを目指していた石川(弘樹)くんとは前職の退職金をはたいてスポンサー契約をしました。
もう一つは東京マラソン。2007年の第一回大会からエキスポに出展していますが、最初は全然売れなかった。ところが2、3年すると海外から参加するランナーの皆さんが、見慣れたブランドだからとたくさんまとめ買いしてくれたのです。それを見た国内の専門店のバイヤーさんたちがパワーバーを手に取ってくれるようになりました。この頃からスポーツをしながら補給をするエナジージェルが日本でも浸透しはじめました。
ピンチがきっかけでパラチノース®を製品に採りいれる
DC : 現在では様々なメーカーのエナジージェルがありますが、主な成分でみれば吸収の速いブドウ糖と吸収がやや速いマルトデキストリンを組み合わせたものが大半だと思います。そうした中で、ゆっくり吸収されるパラチノース®を成分に取り入れた「Challenger」を開発して販売されています。どんな経緯でパラチノース®を採用したのですか。
滝川さん : 実は、パワーバーのエナジージェル製品が食品添加物の規制の変更で日本では販売できなくなるという出来事がありました。すでにエナジージェルの市場は大きく育っていて、わが社の主力商品でもあるのに、どうしたらいいんだろうと頭を抱えました。
その時、毎年春に出展していた宮古島トライアスロンで隣のブースでパラチノース®が出展されていました。隣同士ということで担当者の方と立ち話をしているうちに、パラチノース®を原料に取り入れたスポーツ中の補給製品ができるんじゃないか、と閃きました。2017年に水に溶かす粉末状の「パワードリンク Challenger」、2020年にはエナジージェルの「Challenger パワーリキッド」を発売しました。
DC : パラチノース®のゆっくり吸収されるという性質をどのように活かしたのでしょうか。
滝川さん : パワーリキッドについてはパラチノース®に加えて、ブドウ糖とマルトデキストリンという吸収のスピードが互いに異なる糖質を組み合わせています。最初は単糖類で一番吸収の速いブドウ糖で出力を上げて、次に吸収の速いマルトデキストリンがエネルギーに変わる。そしてゆっくり吸収されるパラチノース®が効いてきて、血糖値が急に下がらない、というイメージです。
粉末状のパワードリンクは主成分のパラチノース®にブドウ糖を組み合わせていますが、こちらは他のエナジージェル製品から得られるエネルギーと組み合わせて、ベースとなるエネルギーを摂取することを想定しています。
パワードリンクについては「ドリンクでエネルギーを補給する」という点もユニークです。特にサイクリストの皆さんにとって、走行中に補給食を食べないことはあってもボトルのドリンクを飲まないことはありません。ドリンクからベースとなるエネルギーが摂れるメリットはすぐに理解されました。
自らのレース中はもっぱらエナジージェルで補給し、胃腸の不具合はなし
DC : 話変わって、滝川さんは国内外のトライアスロンやトレイルランニングのレースに精力的に出場しながら、最近60歳になられました。経験豊富なベテランアスリートとして、レース中のエネルギー補給についてアドバイスをいただけますか。例えば、丸一日かかるトライアスロンや、100kmや100マイルのトレイルランニングレースに挑戦するとしたら、どんなふうに補給食を用意しますか。
滝川さん : レース中は45分ごとにエナジージェルを一個摂るというのが基本です。あとは90分ごとに自社製品の「トップスピード」ですね。トライアスロンもフルマラソンも100マイルのトレイルランも同じです。このエナジージェルの一部はパラチノース®の入った「パワーリキッド」です。100マイルを走るなら半分くらいは「パワーリキッド」にしていますね。トレイルランニングではこちらもパラチノース®が主成分の「パワードリンク」をハイドレーションバッグに入れることもあります。ただ、基本となる補給食はエナジージェルと考えています。
DC : 100マイルのような長時間のトレイルランニングでは、途中で胃腸の具合が悪くなって何も食べられなくなる、といったトラブルがよくあります。どうしたらトラブルを避けられるでしょうか。
滝川さん : 僕自身はレース中に気分が悪くなるとか食べられなくなるという経験をしたことがありません。だからそういう悩みが理解できなくてアドバイスもできないんです。
でもレース中にジェルを食べようとしても胃が受け付けない、というのはジェルのせいというよりも身体のエネルギーが枯渇したからかもしれません。人によって体質が違うだろうから、レース以外の練習中に補給食を試しておくことも大事だと思います。
そう、前日にお酒を飲みすぎてレース本番で気持ちが悪くなったという話はよく聞きますよ。前夜の飲酒はほどほどにしましょうね。
2000年台の後半から今日まで、滝川次郎さんの率いるパワースポーツは日本のトレイルランニングの牽引役であり続けています。今回はゆっくり吸収される糖質、パラチノース®を成分にした「Challenger」についてお話を聞きました。それは机の上の研究や会議室での打ち合わせからではなく、会社の危機が迫る中で出展先で隣り合わせという幸運から生まれた製品でした。革新的なアイディアはいつもそうして生まれるのかもしれません。
長時間運動していると胃腸の調子が悪くなって補給食を体が受け付けなるトラブルは、トレイルランニングの経験者であれば誰もが見聞きしたことがあると思います。だから、滝川さんが「自分はそんな経験はしたことがない」と即答されたのは意外でした。20年以上エナジージェルを日本のエンデュランスアスリートに紹介し続けている滝川さんですから、ジェルをきちんと想定されたとおりに摂取すればトラブルなど無縁のはず、ということなのだろうと筆者は思いました。滝川さんの声からは、パワースポーツが展開する補給食製品についての絶対の自信を感じました。
パラチノース®は各地の大会でブースを出展しています
パラチノース®では今シーズンに各地で開催されるトレイルランニングやウルトラマラソンの大会でブースを出展しています。
パラチノース®100%の補給食「PUREPALA」(ピュアパラ)をはじめとするパラチノース®を使った商品を実際に手に取ってその場で購入することができるほか、ブースのスタッフの皆さんにパラチノース®について質問できる機会となります。